朝、目は覚めた。でも、体を起こすところから重い。
スマホには返信していない連絡があり、洗濯物はたまり、仕事の予定も残っています。何も進んでいないのに、頭の中だけは「早くしろ」とフル稼働している。
そんな日に、元気な日の自分と同じ予定をこなそうとすると、できなかったことがさらに増えていきます。そして夜には、「今日は何もできなかった」と自分へ追撃を入れてしまうんですよね。
でも、調子が悪い日の目的は、通常運転を再現することではありません。
生活と治療を途切れさせず、これ以上の悪化を防いで一日を終える。 そのために、あらかじめ「低電力モード」を用意しておく方法があります。
どうも。プロの引きこもり、まつながです。
ぼくは2度のメンタルダウンを経験しています。この記事で紹介する「低電力モード」は医学用語ではなく、調子が悪い日に予定を減らすための自分用ルールです。病気を治す方法や、受診の代わりになるものではありません。治療中の方は主治医の方針を優先してください。
低電力モードは「頑張らない言い訳」ではない
スマホの充電が少ないとき、画面を暗くしたり、バックグラウンドの処理を減らしたりします。電池が少ないのに、いつも以上の性能を出そうとはしません。
人間も同じだ、と単純に言い切るつもりはありません。ただ、使える体力や集中力が少ない日に、予定だけを通常どおり残すと負担が増える、という考え方には使えます。
低電力モードは、全部を放棄するルールではありません。
- 今日も残すもの
- 一時的に減らすもの
- 自分だけで判断しないこと
この3つを、元気なうちに決めておく仕組みです。
調子が悪くなってから一つずつ判断するのは、HPが少ない状態で設定画面を延々と開くようなものです。先に決めておけば、その日の自分は選択肢を減らせます。
1. まず「できた量」ではなく、いつもとの違いを見る
低電力モードへ切り替える基準を、「やる気がないから」にすると、自分を責めやすくなります。
そこで、評価ではなく変化を見ます。
- 眠れていない、または寝すぎている
- 食事や水分をとる回数が減っている
- 身支度や入浴など、普段の動作が重い
- 文章を読んでも内容が入りにくい
- 連絡を見ることが強い負担になっている
- 不安や考えごとが頭から離れない
一つ当てはまっただけで病気だと判断するものではありません。昨日までの自分と比べて、生活や仕事へどのくらい影響しているかを見るための材料です。
厚生労働省の「こころの耳」でも、疲れや意欲・集中力の低下、睡眠や食欲の変化などがあり、仕事や日常生活に支障が出る場合は、産業医・保健師・専門医へ早めに相談するよう案内しています。
「まだ頑張れるか」ではなく、「いつもの生活から何が変わったか」を確認します。
2. 今日も残すものを3つまで決める
低電力モードで残すのは、成果を出す予定ではなく、生活と治療をつなぐ行動です。
基本は、次の3つに分けます。
| 分類 | 残すものの例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 生活 | 水分、食べられるもの、休める場所 | 完璧な食事や家事を目標にしない |
| 治療 | 服薬、受診、主治医から指示されたこと | 自己判断で薬を増減・中断しない |
| 連絡 | 仕事の欠勤連絡、家族へのSOS | 長い説明より、状況と依頼を短く伝える |
服薬や食事などの優先順位は、病気や治療内容によって変わります。自分の最低限は、できれば主治医や支援者とも相談して決めてください。
すべてを毎日達成するチェックリストではありません。「これだけは自分一人で抱えず、誰かにつなぐ」という項目があってもいいんです。
3. 一時的に止めることも、先に決めておく
残すものを決めたら、次は減らすものです。
調子が悪い日に、部屋を完璧に片づけ、すべての連絡へ返信し、遅れた仕事を取り戻そうとすると、低電力モードの意味がなくなります。
たとえば、次のように決めておきます。
- 急がない家事は翌日以降へ回す
- 返信は、今日中に必要な相手だけに絞る
- 大きな契約や退職などの判断を一人で即決しない
- できなかった分を翌日の予定へ全部上乗せしない
- SNSやニュースなど、負担になる情報を一時的に閉じる
とくに避けたいのは、調子が悪い日に人生全体の結論を出すことです。
「もう働けない」「全部失敗した」と感じても、その日に確定しなければならないとは限りません。期限のある連絡だけ済ませ、大きな判断は体調が戻ったときや、誰かと話した後に回します。
仕事を切り上げることが苦手な場合は、リモートワークの終了ルールと5分の引き継ぎメモも使えます。
4. 連絡文は、元気な日に作っておく
休む必要がある日に限って、「相手へどう説明するか」が大仕事になります。
長い事情説明は、必ずしも必要ありません。相手に伝えるのは、現在の状態、今日できないこと、次に連絡する時期です。
仕事先には、たとえば次のように伝えられます。
体調不良のため、本日の対応が難しい状態です。予定していた〇〇は、明日の午前中にあらためて見通しをご連絡します。急ぎの確認事項があれば、このメッセージへお送りください。
信頼できる人には、もっと短くて構いません。
今日は調子が悪く、一人で判断するのが難しいです。夜に一度、連絡してもらえますか。
文章を完成させることが負担なら、「今日は調子が悪い。あとで連絡します」だけでも、無言で抱え続けるより次につながります。
5. 「悪い日」と「相談が必要な状態」を分ける
低電力モードだけで様子を見続けてよいとは限りません。
厚生労働省は、眠れない日が続く、こころの不安定な状態が数週間消えない、何もする気になれない、すぐに疲れてしまうといったときは、一人で頑張らず、家族やこころの専門家へ相談するよう案内しています。
期間だけで機械的に判断するのではなく、次のようなときは早めに相談します。
- 不調が続く、または繰り返し悪化している
- 食事、睡眠、通院、仕事など日常生活に支障が出ている
- 自分で状態を把握したり、安全を保ったりするのが難しい
- 周囲から「いつもと違う」と言われた
- 主治医から決められている相談・受診の目安に当てはまる
相談先は、かかりつけの医療機関、産業医・保健師、自治体の精神保健福祉センターなどです。勤務先へ相談しづらい場合も、医療や地域の窓口という別ルートがあります。
自分を傷つけたい、消えたいという気持ちがある、または今すぐ安全を保てない場合は、一人にならず、緊急通報や身近な人、医療機関へ連絡してください。電話やSNSの相談先は、厚生労働省の「まもろうよ こころ」から、時間帯や相談方法に合わせて探せます。
自分用の「低電力モード表」を作る
元気な日に、次の空欄を埋めておきます。全部を決める必要はありません。
切り替えのサイン
- いつもと違う変化:____
- 一人で判断しない状態:____
今日も残すもの
- 生活:____
- 治療:____
- 連絡:____
一時的に止めるもの
- 家事・予定:____
- 仕事:____
- 情報・通知:____
- 大きな判断:____
連絡先
- 医療機関:____
- 信頼できる人:____
- 仕事の連絡先:____
- 地域や外部の相談窓口:____
スマホのメモへ保存しても、紙に書いて見える場所へ置いても構いません。自分で読む余裕がないときに備え、信頼できる人と共有する方法もあります。
今日決めるなら「残すもの」を一つだけ
この記事を読んだ日に、低電力モード表を完成させなくても大丈夫です。
まずは、調子が悪い日にも残したいものを一つだけ決めます。
- 水分をとる
- 主治医の指示どおりに服薬する
- 一人で抱えそうになったら、決めた相手へ一言送る
自分に必要なものは、人によって違います。できなかった日の罰を増やすためではなく、判断できない日に選択肢を残すための一項目です。
元気な日の予定を100点として、毎日そこへ戻ろうとしなくていい。
調子が悪い日は、少ない電力で生活をつなぐ。その日を生き延びること自体を、今日の仕事にしていいんです。
日々のセルフケアを始めるまでの負担を減らしたい場合は、やる気に頼らず手間を減らす5つの工夫へ。収入が止まる不安で休めない場合は、働けない期間の生活防衛の設計図もあわせて確認できます。
ほかの困りごとから記事を選びたいときは、メンタルヘルスの読むガイドへ。生活の手間、調子が悪い日の予定、相談の準備、仕事の調整から選べます。
参考:厚生労働省 「こころと体のセルフケア」、「ストレスは早めの対処が大切」、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」セルフケア資料。
サムネイル写真:Samson Katt / Pexels(Pexels License)。記事テーマに合わせたイメージ写真であり、本人の使用環境や体験を撮影したものではありません。
