STRATEGY NOTE

キャリア

フリーランスの仕事量の上限はどう決める?稼働時間と案件数の考え方

「もう1件くらいなら受けられそう。でも、最近ずっと仕事のことを考えてるな……」

フリーランスで仕事が増えてくると、納期には間に合っているのに、生活の余裕がなくなることがあります。

仕事量の上限を決めるなら、まず生活を削らずに使える週の時間を出し、そこから事務作業と予備時間を引く。残った時間に、会議や連絡、修正まで含めた案件の工数が収まるかを確認します。

「月に何件まで」と件数だけで決めるより、次の依頼への返事に使いやすい方法です。

どうも。プロの引きこもり、まつながです。

ぼく自身、独立して仕事が増えた頃は、売上を伸ばす目標は考えていました。一方で、どんな状態になったら受注を増やさないかは決めていませんでした。納期に間に合うかだけでなく、同じ働き方を翌月も続けたいか。この違いを、今は仕事量を考える基準にしています。

受けようと思えば仕事を増やせた時期にも、新しい依頼を入れないことがありました。忙しくなるにつれ、食事は外食やデリバリーが増え、運動する時間が減る。仕事をしていない時間にもイライラし、家事や育児へほとんど時間を使えない。仕事の予定だけを見れば空きがあっても、生活全体では増やさない方がよい状態でした。

今回は、その反省を踏まえて、仕事量の上限を数字と予定に落とし込む方法を整理します。以下の時間や件数は説明用の例なので、自分の働き方に置き換えて使ってください。

生活を残して使える時間から事務作業と予備時間を引き、新しい案件の制作、会議、連絡、修正が収まるか判断する流れ
図1:案件数だけで決めず、生活を残した時間から引き算し、依頼に付随する作業まで含めて判断します。

まず、生活を残した状態で週に何時間働けるかを出す

最初に決めたいのは、仕事を始める時刻と終える時刻、休みの日です。

そのうえで、食事や休憩、家事、通院、家族の予定など、仕事に使わない時間を除きます。仕事を入れた残りで生活を回そうとすると、忙しい週ほど生活の方が押し出されちゃうので。

たとえば、平日の10時から17時までを仕事の枠にして、毎日1時間は昼休みにする場合。

(7時間 − 休憩1時間)× 5日 = 週30時間

これが、その週に仕事全体へ使える枠です。30時間すべてを納品物の制作に使えるわけではありません。

副業なら、本業や移動、家の用事を終えた後に、無理なく確保できる枠だけを数えます。「土日は予定がないから全部働ける」は、ひとまず保留で。休む予定だって、予定です。

毎週同じ時間を確保できない人は、まず今週と来週を別々に計算してみてください。

事務作業と予備時間を引いて、案件に使える枠を決める

フリーランスには、納品物を作っていない時間にも仕事があります。

  • 請求書の作成や経費の整理
  • 新しい依頼の相談、見積もり、営業
  • 自分の発信や学習

これに加えて、作業の遅れや急な用事を吸収する予備時間も残します。予備時間まで売り切ると、ちょっとした予定変更を夜や休日で埋めることになるからです。

週30時間の例なら、次のように分けられます。

時間の使い道 週の時間の例
仕事全体に使える枠 30時間
案件共通の事務・営業など −4時間
予定変更に備える予備時間 −6時間
契約中・新規の案件に割り当てる枠 20時間

予備時間を何時間にするかに、一律の正解はありません。これは「2割空ければ大丈夫」という基準ではなく、計算の例です。見通しの立ちにくい仕事や予定が多ければ、さらに余裕を取ります。

ここでは、案件そのものに付随する会議や修正は、次のステップで各案件の時間に含めます。二重に引かないように分けておきましょう。

案件の工数には、会議・連絡・修正も足す

「この作業なら週5時間」と見積もった案件でも、実際には定例会議があり、事前準備があり、チャットの確認があり、修正がある。

カレンダーは空いているのに忙しいときは、こういう時間が見積もりから漏れていないかを確認します。

1案件にかかる作業 週の時間の例
制作・実作業 5時間
会議と準備 1時間
連絡・確認 1時間
通常想定する修正 1時間
合計 8時間

案件に使える枠が週20時間なら、この条件の案件を2件受けると16時間。残りは4時間です。

同じ条件で3件目を受けると24時間になるので、今の枠には入りません。「あと1件」でも、必要なのは8時間なんですよね。

ただし、これは同じ負荷の案件が並ぶ場合の計算です。軽い保守と、新規の立ち上げを、どちらも「1件」と数えるだけでは判断できません。件数の上限は、各案件の合計時間を出した後に考えるのがよいと思います。

また、週平均では収まっていても、同じ週に納品が重なればオーバーします。受ける前に、納期が集中する週も見ておきましょう。

時間に収まっても、予定が細切れになりすぎないかを見る

同じ週20時間でも、まとまった作業時間を取れる仕事と、毎日こまめな対応が必要な仕事では、予定の組みやすさが違います。

たとえば、午後に3時間の作業が必要なのに、途中に会議が2本入っていたら。「合計3時間空いてるから大丈夫」とは言いにくいですよね。

新しい案件を検討するときは、時間の合計と一緒に、次の条件を確認します。

  • 会議の曜日・時刻は固定か、毎週変わるか
  • 返信はいつまでに必要か、その日のうちでよいか
  • 自分だけで進められるか、確認待ちが多いか
  • 繁忙期や納期が、既存案件と重ならないか

分からない条件が多いなら、すぐに「できます」と返さず、先に確認する。その確認も、仕事量を見積もる作業のひとつです。

上限を超える依頼には、変えられる条件を返す

計算して枠を超えたとしても、断る以外の選択肢がある場合もあります。開始日、納期、担当範囲のうち、どこを変えれば対応できるかを考えます。

たとえば、さっきの例で残りが週4時間なのに、週8時間の依頼が来た場合。こんな返し方ができます。

ご相談ありがとうございます。現在の稼働状況ですと、今月は週4時間程度まで対応可能です。まずはAの作業に範囲を絞る形であれば、お受けできます。Bまで含めた対応をご希望の場合は、開始時期を調整できるかご相談させてください。

これは返答例なので、作業名と時間は実際の見積もりに合わせて変えてください。

ぼくが実際に返していたのは、「今は手一杯ですが、2か月後なら受けられます」「月60時間は難しいですが、30時間なら対応できます」といった条件でした。持病について取引先へ説明するのではなく、開始時期や対応可能な時間を具体的に伝えていました。

その結果、条件を変えて依頼してもらえたことも、今回は見送りになったことも、後からまた声をかけてもらったこともあります。条件を伝えれば必ず受けられるわけではありません。それでも、受けるか断るかの二択にせず、続けられる範囲を返すことはできます。

相手にも「今はここまでなら頼める」と伝わる方が、相談しやすくなります。来月の予定がまだ読めないなら、「来月ならできます」と約束する必要もありません。

収入が気になる場合も、夜や休日を足す前に、担当範囲や単価、今後の契約更新時期を並べて考えたいところです。既存の約束を急に変えるのではなく、相談できるタイミングで調整していきます。

ぼくの場合、当時は月収が90万円から80万円へ下がっても、必要な生活費を十分に上回る状態でした。最悪、毎月の収支が赤字にならない水準まで減っても生きていける。そう考えられたことが、空いた仕事の枠をすぐ埋めなかった前提です。この判断は、生活費や蓄え、扶養する家族などによって変わります。

新しい依頼が来たときは、妻にも「もう1件受けてもよいと思う?」と相談していました。自分では受けられそうでも、「これ以上増やすと大変そう」と言われたら、家庭と体調の両方から増やさない方がよいサインとして受け止める。仕事量を、自分一人のカレンダーだけで決めない方法でした。

仕事を減らして空いた平日の日中には、外出、ジム、散歩、昼寝などを選べるようになりました。家事や育児へ使える時間も増え、家庭内にも余裕が生まれたと感じています。ぼくの場合、家で仕事を続けて運動や外出がなくなると、体重が増え、気分も下がりやすかった。運動へ使える時間が戻ると、体重が減り、メンタルも安定しやすいという実感がありました。これは個人の経験で、仕事量を減らせば病気が改善するという意味ではありません。

まず2週間、見積もりと実際の時間を比べてみる

最初に決める上限は、仮置きでOKです。ここで提案したいのは、まず2週間だけ、案件ごとの見積もりと実際の時間を記録してみること。

厳密な計測が負担なら、作業が終わったときに「会議1時間、作業2時間、連絡30分」とメモするくらいから始めましょ。

週の終わりには、次の3点を確認します。

  1. 見積もりから抜けていた作業は何か
  2. 決めた終業時刻や休日を守れたか
  3. 来週も同じ予定で働きたいと思えるか

毎週、予備時間が通常作業で埋まるなら、見積もりや受けている量を見直します。「なんとか終わった」を、次の週の標準にしないためです。

2週間だけで繁忙期まで分かるわけではないので、月末や納期が集中する時期にも確認します。上限は一度決めて終わりではなく、実際の働き方に合わせて調整するものです。

次の依頼に返事をする前に、この4つをメモする

今日やるなら、まずはこれだけで十分です。

  • 今週、仕事全体に使える時間:__時間
  • 事務作業と予備時間を引いた案件の枠:__時間
  • 既存案件に必要な時間:__時間
  • 新しい依頼に必要な時間と、納期が重なる週:__

新しい依頼を足しても枠の中に収まり、必要な作業時間をカレンダー上でも確保できるか。ここまで確認できると、「なんとなく不安だけど受ける」から一歩進めます。

ぼくは、仕事が増えたときほど、売上と一緒に生活の余裕も見たいと思っています。仕事量の上限は、そのために自分で持っておける判断材料です。

週の仕事量が収まっていても毎日切り上げられない場合は、終了ルールと5分の引き継ぎメモで、その日の未完了の作業を残す方法を確認できます。

仕事量に加えて、作業場所や連絡、評価、体調、お金の条件も一緒に確認したい方は、フルリモートを続けるための7条件へ進んでください。

この考え方の背景をnoteに書いています

仕事が増えたときのぼく自身の経験や、暮らしを後回しにしないために考えていることは、「フリーランスが月収100万超えを目指すよりも大切にしたい『仕事量の上限』について」(無料note)にまとめています。

数字を整理したうえで、自分がどんな働き方を続けたいかも考えたい方は、こちらも読んでみてください。


サムネイル写真:写真:Tatiana Syrikova / Pexels(Pexels License)。